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ジャイアントパンダの見分けがつかない人に朗報!「顔認識」アプリが間もなく登場
 

 ジャイアントパンダのトレードマークと言えば、白と黒の毛皮とユニークな“目の周りのクマ”の模様です。そして、どのジャイアントパンダも見た目が非常に似ているため、個体識別は容易ではありません。ジャイアントパンダの科学研究を応用した保護事業において、正確な個体の識別はその保護管理や研究を行う上での基盤と言えます。飼育動物を管理する上でも、その日常飼育と血統や資料管理において欠かせない作業であり、野生動物の場合においても、動物の個体群構成の研究に役立ち、野生動物の保護管理に科学的なサポートをもたらします。これまで、成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地(以下、成都パンダ基地)では、ジャイアントパンダの個体識別の研究分野において一定の功績を上げています。その中でも、論文「Giant Panda Face Recognition using Small Database(小規模なデータベースを使用したジャイアントパンダの顔認識)」は、画像処理等に関する会議「ICIP2019(2019年 IEEE International Conference on Image Processing)」で採択されました。また、これらのデータバンクを応用したジャイアントパンダの顔認識アプリも近々発表される予定です。「ジャイアントパンダの見分けがつかない」と困っている人にとっては、まさに朗報と言えるでしょう。

 野生のジャイアントパンダの保護に取り組むため、中国では、専門家によるジャイアントパンダの大々的な科学調査が過去4回に渡り実施されてきました。その研究の結果、ジャイアントパンダの野生個体群の膨大で貴重なデータの収集に成功し、野生のジャイアントパンダの生息数も概ね正確に把握できています。しかし、野生のジャイアントパンダの野生個体群の構成については未だ明確化されておらず、その調査における課題は山積みです。動物の個体群は、主に個体群の密度、年齢構成、性比、出生率及び死亡率などの特徴から成り立ちます。ジャイアントパンダは、中国の高山の竹林で単独で生活し、広大なテリトリーを必要とする習性のため、野生個体群の構成の研究に向けた追跡調査は困難を極めます。高効率かつ高精度な野生のジャイアントパンダの個体群数や分布状況の調査を行うことは、早急に取り掛からなければならない最重要課題と言えます。

 成都パンダ基地は、中国政府が実施するジャイアントパンダをはじめとする絶滅危惧野生動物の域外保全プロジェクトの主要研究機関の1つに数えられ、長年に渡りジャイアントパンダの保護事業と研究に従事してきました。そして、数年来に渡り、ジャイアントパンダの域内保全と域外保全との効率的な融合を目指し、中国のジャイアントパンダの個体群調査に積極的に参加してきました。野生の孤立している小規模の個体群の復興や保護の研究を基盤に、より効果的なジャイアントパンダの保護事業が行えるよう、新たな調査方法や技術を模索し、現状の個体群調査に存在するネックを打破しようと尽力してきました。

 2017年、成都パンダ基地はシンガポールの南洋理工大学、四川師範大学と協力し、画像解析を用いたジャイアントパンダの個体識別の技術の研究に着手しました。そして2年の年月を費やし、12万点以上の画像と1万点以上の動画のデータベース化に成功し、約1万部の画像のタグ付け、分割、注釈を完了させました。その結果、これらのデータベースに基づいた飼育下のジャイアントパンダの顔面の自動検知による個体識別が実現したのです。また、専門家らは、これらのデータベースを応用したジャイアントパンダの「顔認識」アプリの開発にも成功しました。ジャイアントパンダの顔面部のユニークな特徴をデータ化し、データの分析、対比を行った結果、ジャイアントパンダの正確な識別が可能となりました。この研究に用いられたアルゴリズムは、世界最先端とされる5大ニューラルネットワークディープラーニング法(AlexNet、GoogLeNet、ResNet-50、VGG-16、VGG-Face)より優れた技術であると言われています。

 今後、成都パンダ基地は、引き続き研究チームと共同で人工知能テクノロジーを応用した飼育下と野生のジャイアントパンダの映像資料のビッグデータの統計と分析を行い、リーズナブルかつ迅速、そして効率的で持続可能な野生個体群の調査や健康観測を行うための新たな方法を展開する予定です。そこから、自然保護区のジャイアントパンダの知能測定や保護管理事業のレベルアップに向けた技術面でのサポートに繋げたいと考えています。この度の、ジャイアントパンダの顔認識技術の開発と応用には、業界内外から大きな反響が寄せられています。この技術の開発によってもたらされる恩恵は、ジャイアントパンダの保護事業の推進だけではありません。私たちがジャイアントパンダを見分ける際にも、大いに役立ちます。今後は、スマートフォンのアプリを通じてジャイアントパンダの顔をスキャンするだけで、その個体の基本情報を入手することが可能になるのです。

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 ICIPとは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers,電気電子技術者協会)が主催する画像処理に関する会議を言います。IEEEは、160か国以上の40万人を超える電子技術や情報科学のエンジニアからなる、世界における最も大規模な非営利性専門技術学会です。IEEEは、電気、電子、コンピューターシステム、そして科学に関する分野での開発と研究に注力しており、宇宙、コンピューター、電気通信、生物医学、電力、消費者向け電子製品などの分野において既に900件余りが業界企画として認められており、最も影響力のある国際学術組織へと成長を遂げています。1994年、IEEEの分会であるSPS(信号処理協会)がICIP会議を独自に設立しました。これは、基本的な画像処理から視覚理解などのハイレベルな分野にも及ぶ画像処理などの分野を対象とする、世界トップレベルで最大規模の学術会議です。